本学修士課程学生が筆頭著者の研究成果が、世界初の研究として学術論文誌に掲載されました

更新日: 2025年02月28日

本学での卒業研究と修士課程での研究内容をまとめた、本学大学院 工学・マネジメント研究科 修士課程2年 今井翔太さん(橋元研究室所属)が筆頭著者(主たる研究者)である共著論文が、査読付き研究論文として学術誌に掲載が決定し、早期公開論文として公開されましたので、お知らせします。

 

「ウェアラブルな塩分濃度計測センサによる全身喪失塩分量計測技術の開発」

今井 翔太, 小須田 司, 皆内 佳奈子, 橋元 伸晃

原稿種別: 速報論文

論文ID: JIEP-D-24-00111

発行日: 2025年

[早期公開] 公開日: 2025/02/21

DOIhttps://doi.org/10.5104/jiep.JIEP-D-24-00111

 

(本研究の概要)
本論文は、近年大きな社会課題となっている熱中症罹患予防技術の研究テーマを、全くの手探り状態から卒業研究として研究を開始し、以降修士課程に至るまで一貫して3年間、その研究を丁寧かつ精力的に深化させてきた研究内容を論文化したものです。この度、エレクトロニクス実装学会からその独創性と有用性が認められ、研究論文としてエレクトロニクス実装学会誌への掲載の栄誉に浴したものです。なお、本研究はフジタ(株)、カナルウォーター(株)との共同研究で実施されました。

(本研究背景)
地球温暖化の進行に伴い、特に暑熱現場での熱中症罹患は大きな社会課題となっており、この課題の早急な解決が求められています。熱中症発症の機序によれば、熱中症の軽度の段階では大量の発汗が見られ、この発汗による体内からの水分・塩分の排出によって、水分・塩分のバランスが崩れることで、深部体温の上昇、脱水症状と症状が進行し、最終的には身体の生命活動に大きな影響を及ぼすとされています。

(本研究の目的)
そのため、本研究ではこの熱中症発症のメカニズムに着目し、熱中症発症者の最も多い業種である建設業の暑熱現場で装着義務のあるヘルメットに取り付け可能な、ウェアラブルかつ経時的に汗の塩分濃度を計測する機構を開発し、全身発汗量を同時に計測することで、全身からの発汗による喪失塩分量の推定を行い、発汗で失われた水分と塩分の定量的な補給を促すことで熱中症の罹患を予防することができるシステムを開発することを目的としました。

(本研究の意義)
本研究の重要性は、熱中症関係研究者には広く認識されているにもかかわらず技術的難度が高く、未だに実用化されているシステムは存在しません。しかし、本論文の研究では、それをどのように実現するかという課題に誠実に取り組み、学内倫理審査を経たヒト実験で実証する地道なプロセスの研究を繰り返し、世界初の新しい計測手法を見出し、熱中症予防ができる可能性の高い実用的なシステムとして結実させました。具体的には、電気化学的な手法で汗導電率から汗含有塩分濃度を推定できるウェアラブルなセンサおよびシステムを開発し、既に開発されている全身発汗量センシングシステムと組み合わせることで、発汗による全身塩分喪失量が計測できることを実証しました。その結果、研究目的であった、ヘルメットに取り付け可能なウェアラブル塩分量センシングシステムが開発でき、熱中症予防技術への適用可能性を示すことができました。

(本研究で見込まれる成果)
本研究成果によって、より正確な熱中症罹患予測が可能になると考えられています。最近増えている高血圧の人でも適量な塩分摂取を摂取することができ、高血圧が悪化しない(体外に出た塩分量だけを正確に摂取できる)ので、少子高齢化が進む建設業現場からの期待も多く寄せられています。本研究は、オリジナリティと実用性が高く、健康機器産業にも大きく寄与することが期待されます。
橋元研究室としては、本学発初のベンチャー企業であるカナルウォーター(株)から上市したヘルメットによる全身発汗量計測技術に続く、熱中症罹患予防に係る研究の第二弾となり、カナルウォーター社が、次の商品として商品化を計画しています。
なお、既に本技術の基本特許は取得済です。

 

(筆頭著者 今井翔太さんのコメント)

この度は、私が自分で提案し卒業研究と続く修士研究で取り組んできた研究内容が、学術論文として世の中に認められ、大変に嬉しく、名誉に感じています。一日も早く、私が研究してきたこの研究が完成して、本研究の成果によって、暑熱現場で働いている人々が熱中症罹患の危険を回避できるようになり、より安心・安全な労働現場で働いていただけるようになることを強く願っています。

 

(ご参考:知的財産情報)

特許7560837号「喪失塩分量計測装置及び警報装置」

 

以上