渡邊 圭市講師 Keiichi Watanabe
教員紹介
研究キーワード
数学解析、数理解析学、偏微分方程式論、ナビエ・ストークス方程式
研究内容
気体や液体などの力学的な挙動を解析する物理学のことを流体力学と呼びます。代表的な方程式として、ナビエ・ストークス方程式があり、同方程式は海流やパイプの中の水の流れ、翼の周りの空気の流れなどをモデル化するのに使われてきました。実際に、航空機や自動車の設計、血流の解析、発電所の設計、公害の解析など、社会の様々な場面で流体力学の研究成果が役立てられています。世界中の研究者たちによって流体力学に関する知識が深められ、我々の日常生活が便利になったことは言うまでもありません。
しかしながら、数学解析の観点から見ると、まだ多くの未解決問題が残されています。例えば、ナビエ・ストークス方程式の初期値問題について、任意に与えられた初期値に対して時間大域的に滑らかで一意的な解が存在するかどうかは、数学の重要な未解決問題の一つです。この問題は、クレイ数学研究所が100万ドルの懸賞金をかけたミレニアム問題の一つに挙げられています。また、接触角が生成されるナビエ・ストークス方程式の自由境界問題など、現在物理学や工学の観点からも盛んに研究されている問題について、数学的な側面からも研究が進められています。
本研究室では、関数解析学や調和解析学などの現代数学の手法を使って、ナビエ・ストークス方程式の解の数学的な性質を明らかにすることに取り組んでいます。さらに、数学と工学や物理学の関わりを見出し、数学的な研究成果を社会に還元することを目指しています。
研究から広がる未来
流体数学(流体力学に対する数理解析学)という分野は工学などの他分野と補完し合うものとして知られています。例えば、工学で行われる数値シミュレーションの正確性や妥当性は流体数学によって支えられるものであり、一方で工学特有の考え方(流れを近似する方法など)は、数学からだけでは思いつかないような発想をもたらすことがあります。このように、13世紀イギリスの哲学者ロジャー・ベーコン (Roger Bacon) が『大著作 (Opus Majus)』に書き記した言葉 "Et harum scientiarum porta et clavis est mathematica"(「数学は科学への扉であり鍵である」)は現代科学にも通じる概念です。 本研究室の成果は、地球温暖化や気候変動といった現代社会における重要問題に対する数学的基盤を与えることが期待されます。将来的には、工学の専門家と協力し、数学及び工学の最新の知見を基に共同研究を行うことで、数学と工学の両面からの長年に渡る未解決問題にブレイクスルーをもたらし、新たな研究分野を開拓することができると期待されます。
研究室の様子
本研究室には、研究や授業で必要な図書や資料が揃った本棚に加え、幅広い白板が設置されており、学生や研究者との議論や打ち合わせにも利用できます。本研究室では、オフィスアワーを通じて、学生の皆さんの工学基礎としての数学の学びをサポートしております。また、本研究室では、国内外の多くの研究者と積極的に共同研究や交流を行っております。
メッセージ
現代は一人の天才が出てきて全てを作り上げるような社会ではなく、様々な分野の人たちが協力しあって一つのものを作り上げていく社会だと考えております。毛籠勝弘氏の言葉によると現代では技術から顧客ニーズを探すのではなく、顧客ニーズに合った商品を造るための技術が求められています。つまり、エンジニアも経営に携わり、経営陣と一緒に一つのものを造っていくことが重要視され始めています。
本学は、このような観点から工学と経営学の融合教育を提供しております。本研究室では、エンジニアを志す皆さんにモノづくりの基盤となる数学の学びをサポートしていくために、微分方程式をはじめとする「応用数学」を中心に数学教育を行っています。高校生や教員,企業の方々の照会(問合せ)や、見学(訪問)を歓迎しています。
リンク
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Keiichi WATANABE